「宮本常一を語る会」主幹世話人 嶋村初吉 (西日本新聞社)
~だれに命令せられるのでもなく、自らが自らに命令することのできる尊さを、この人たちは自分の仕事を通して学びとっているようである~
(「庶民の発見」講談社学術文庫、26頁)
かつて農山漁村は貧しかったが、家並み、風景に美しさがあり、確とした人生観を持っている人がいた。
自発的に人生を磨いている姿を、宮本常一は広島・西志和(現、東広島市)の丸山かわるさんや名も知らぬ石工から見て取り、感動している。
農村の改善事業に30年間、励んだ丸山さん。仕事の傍ら村をよくしようと夜学に通い、農業の補習学校の先生もしながら、湿田を乾田にし、暗渠排水を手掛け、耕地整理に汗を流した。ついには請われて村長にもなった。村人は夏など家の戸を閉めないで寝ている。お互いを信じあい、安心できる村が存在する。それを支える人々の取り組みに、宮本常一は視線を注ぐ。
もう一人、西条高原(東広島市)で出会った石工。冬、寒さのなかで行う仕事の辛さ、子供にはこの仕事を継がせたくないという。
親方からの請負仕事では経費の関係で手を抜くこともあるが、そんな仕事をすると大雨の日には石垣が崩れぬかと夜も寝られない。
「結局、いい仕事をしておれば、それは自分ばかりでなく、あとから来るものもその気持ちをうけついでくれる」。この言葉が、彼の人生観でもあった。この後に冒頭の言葉を、宮本常一は記した。
宮本常一を語る会
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